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森健一の「創造力を磨く7か条」

■第2回■
八合目の論理

【2006.08.28】


写真 研究開発と山登りは似たところがある。八合目あたりのところが急になって、登るのが苦しくなってくる。
そのときのリーダーシップには3通りの方法があるとおもう。
一つは、最初によく考えているのだからこの道は正しいと信じて一歩一歩でも苦しい道を進む。
二つめは、これは苦しい。このままでは行きつけないかもしれない。たとえば、垂直の壁が何メートルも続いているとき、トラバースして、もうちょっといい道を見つける。あるいは直登を避けて斜めに登ったり、巻道を考える。
三つめは、これは間違った道を登ってしまった。一度山を下りて見直して、もう一度登り直そうする選択。
私の経験では、苦しくなったとき一番目の選択が正解だったことが多い
苦しくても一歩一歩登って、八合目を過ぎて、九合目に来ると頂上が見えてくる。山というのは最後まで急ということはないから、頂上が見えてくると、みんなは「それゆけ、やれゆけ」で最後の登りはアッという間に登ってしまう。

頂上が見える直前の一合が一番苦しい。このとき必ずケンカが始まる。
「おまえが約束したことをやっていない」「あのときの判断が悪かった」とかお互いに言い合う。だから「ケンカが始まったら八合目だと思え」ともいえる。
そんなとき「ケンカをやめて、口をつぐんで頑張れ。これが正解なことが多いよ」というのがリーダーの役目だ。
一番悪いのは、三番目の選択。戻ってもう一度やり直そうとするやり方。これをやると、何度トライしても八合目が苦しくなったら下に降りてしまう。これは負け馬のパターン
勝ち馬のパターンは、ケンカが始まったら八合目、と考えてリーダーシップを発揮して、何とかあと一合登ることを工夫する。
そういうチームのメンバーは、次に自分がリーダーになったときにそのやり方を学んでいる。苦しいときはこうしたら良いんだ、下がったらダメなんだを知っているだけで勝ち馬のパターンになる。

前回書いた、コンセプト開発の段階では、いきなり霧が晴れるような、目からウロコが落ちるような感激がある。アイディアを出し合っているうちに、ある時「こうじゃないか」と誰かがいうと、一気に上昇気流に乗った感じで全員が確信できるものができあがる。やるべき未来が見える。
ところが、実際の仕事は、だんだん頂上に近づき、だんだん頂上が見えてくる。いきなり見えてくることはない。だからこそ、よく考えられたコンセプトを共有して、間違った道ではないと信じて登ることが大切となる。技術の発展には、いきなりパッと扉を開けるようなブレークスルーはあまりないように思う。

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