MEC Topへ前ページへ次ページへ


森健一の「創造力を磨く7か条」

■第3回■
東芝の新人教育

【2006.09.04】


写真 コンセプトを創造する力は誰にでも備わっている基本的な力だとおもう。創造性というと研究所や一部の天才的な人に備わっている特殊な能力だと誤解している人がいるが、それは間違っている。問題は、自分が自分の創造力を自覚していないだけなのだろう。

東芝の情報事業本部でやる新人研修で、私は50〜100人の新人を前にして毎年「この中で、創造力に自信のある人は手を挙げてくれ」と質問する。ところが、一人も手が上がらない。つぎに「体力に自信がある人、手を挙げてくれ」というと、わーっと何人か元気よく手を挙げる。
で、私は「皆さんは、体力と同じように創造力も持っているんです。体力は、山登りなどで他人より早く登れたなと自覚できる経験が持てる。体験する瞬間がある。けれども、創造力というのは、人よりも優れていると思える経験をすることはあまり無かったのではないか。だから、情報機器事業本部に入ってきて、最初の研修は、あなた方が既に創造力を持っているということを体験してもらうプログラムです」というと、みんなびっくりする。

そこで、3か月間の研修が始まる。10チームに分けて5〜7人で1チームを組ませる。
チームは電気、機械、工場経営、ソフトウエア、応用化学など分野の違うもの同士を組み合わせる。 テーマは、今でいうロボコンの簡単なもの。
たとえば、直径3センチの円盤と、一辺3センチの正方形の板と、一変3センチの正三角形の3つのメダルを分別する機械を作りなさい。ただし、メダルを入れる場所の30センチ以上は高いところで分別しなさい。上げるメカニズムを作りなさいとなどの条件をつける。チーム内で毎日持ち回りで日誌を書かせる
最後の採点では独創性を重視する。コストや正確性、スピードの性能も評価する。隣のチームと似たアイディアの場合は両方減点する、ともいっておく。

途中2か月くらいで、中間発表をさせると、どこのチームもできていない。アイディアすらまとまっていない。ところが、最後の1か月で不思議とまとまってしまう。みんなすばらしいアイディアのものができてくる。
なぜか。その理由は、全く違う分野の人たちとチームを組ませることにある。みんな違うことを勉強してきたから、最初は言葉がお互いに通じない。だから、最初の頃の日誌には「こんな馬鹿なやつがいるチームで、ものなんかできるわけがない」と、ぶつぶつぶつぶつ、そんなことばかり書いてある。ところが、最後の1〜2週間前になると、日誌の様子が変わってくる。
このチームは素晴らしい」。
「今は、仮の問題が与えられている。だけど、この7人のチームに会社が本当の課題を与えたら、このチームなら絶対できる」。
そういう論調に変わってくる。
このプログラムが終わったあとに、1位から10位まで順位をつけるが 「みなさん、この順位は忘れて下さい。一番重要なのは順位をつけるところにあるんじゃないんです。実は、前にも言ったように、皆さんが創造力を既に持っているということを実証し、体験をしてもらうために、これをやったのです。その証拠は、日誌に書いてあります。最後の2週間のところだけでいいから、みんなで読み返して下さい。もう自分たちが、そういうものを持っているということが、わかっているじゃないですか」と。
一人ではなかなかできないものが、7人のチームならそれができる
三人寄れば文殊の知恵というが、チームならできる
それが素晴らしいことだ。

                         [→次ページへ]

MEC Topへ前ページへ次ページへ