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森健一の「創造力を磨く7か条」

■第6回■
ガン幹細胞を見つけろ

【2006.09.25】


写真 いま教えている東京理科大学のMOTの学生は社会人だ。ほとんどが自分のお金を使って通ってくる。選ぶ研究テーマが、会社でやっている仕事の延長みたいな人が多い。
私は「自分でお金を使って、会社の仕事を手伝うのはもったいない。そうではなくて、あなたがいま主任なら、ひとつ上の課長になったらば何をするか考えなさい。この課を5年後には儲かる課にするために、どんな製品を作ったらよいかと考えなさい」と言っている。

ある大手の電子機器メーカーの人は、DNAチップの研究をしている。ここで何がしたいかとたずねたら、肝臓ガンのDNAチップをやりたいという。
そこで私は、「そんなのは止めておけ」とアドバイスした。
なんとかガンのチップ、というのは世界中の会社がやっているではないか。いまさらそれにプラス1するようなことをここで細々とやっても仕方ないだろう。その他大勢にしかならない。

私ならこんな風に発想する、といった。
ガン細胞はなぜ転移するのか。胃ガンが肝臓ガンに転移するのはなぜか。一度分化してしまった胃の細胞は肝臓に移植できないことは常識だ。幹細胞が一度組織細胞に分化したら戻ってこれないはずなのに転移が起こる。そうだとしたら、考えられる仮説は、ガン細胞では細胞分裂の逆で、未分化が起きている。ガン細胞は先祖帰りして、胃の細胞にも肝臓の細胞にもなれるから、他の細胞をガン化するのじゃないか。その仮説が本当だったら、未分化したガン細胞が血液に出てきたところを捕まえて、やっつける。
これができれば、人間社会に貢献するし、あなたの会社は世界でトップになれる、と。

しばらくして「調べたら、最近そういう研究があります」といってきた。
そこで、「次にやることは決まった。世界の、あるいはアメリカのナンバーワンの先生と、日本のナンバーワンの先生を見つけなさいそこに会社で委託研究費を出しなさい。そして、ガン幹細胞のDNAチップを作ることをウチにやらせて下さいと頼みなさい
「あなたのやることは、ガン幹細胞を勉強して、試薬の名前とか、活性物質の名前とかそれを全部覚えて、それが終わったらアメリカの大先生のところへ留学しなさい。あなたのこの一年はそれをやることです

東大のライフサイエンスの名誉教授にあったとき「ガン幹細胞という考えがあるそうですが、あの考えはどれくらい本物ですか」と聞いたら、「まあ50/50ですね」とおっしゃる。それを彼に伝え、彼は上司に「半々です」と伝えたらしい。上司は「半々ならリスクが大きいから止めろ」と言っていると彼から聞いた。
そこで私は「上司は必ずそう言う社長に言いなさい。あなたが言わないならぼくは社長を知っているからぼくから言うよ」
そして、社長は「半々ならやれ」と彼に言ったという。

この話の後半のポイントは、経営者と中堅幹部の判断の違いである。
上司は、半々のビジネスにはかけない。現実にあるリスクが50では当然のことである。
これに対して、経営者は、彼の「モデルを作れる能力を評価して」判断をする。50の可能性にかけたのではなく、その人物の可能性にかけたのだ
経営者が何らかの判断を最終的に下すとき、「人」の可能性にかける要素はとても大きい。

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