
1986年6月発行
●取材協力・訳/湧源クラブ(池田和正、岸美佐、観音康夫、小林正典)
●協力/日本建薬学会
●写真/英 隆
CG、コンピュータ・グラフィックスによって美しく表現された図形、 フラクタル注1と呼ばれるその数学的図形は、自然の中に存在する隠れた秩序について、深い示唆を与える。 いまやフラククルは、不思議な図形、美しいかたちとして私たちには馴染みやすいものとなっており、その数学的意義 は、自然科学の多くの分野に浸透し、認められるものになった。しかし生みの親マンデルブロにとっては、フラクタル はあくまでも、飼いならせない「怪物」である。それは永遠に、人間には馴染みにくい、不可思議な理論を生み出しつ づけるものであるようだ。ときには人びとに、全くそれを受けいれられないような拒否反応をもたらすもの一相手がた とえ科学者だとしても−、それこそがフラクタルが指ししめすところの、数学的「怪物」の真の姿なのである。そのよ うな「怪物」を生み出す魔法使いたち、カントール然り、ペアノ然り、マンデルブロ然り‥‥‥彼らには、イメージの 魔術師としての特別な資格が、数学者としての特別な才能があるのだろうか。
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私は視覚的人間です。 戦争が終わったとき、 自分には数学的操作を習う必要が ないことを悟りました。 AlJ−−−早速ですが、あなたの“Ahaの瞬間”についてお伺いしたい。フラクタルの基本的なアイデアというものは、一度にパッとひらめいたのですか。それとも長い時間かかって徐々にできたものなのでしょうか。 マンデルブロ−−−“Aha”というのは一瞬ではなくて、それには10年、あるいは15年もの時間が、費やされています。
ずいぶん長い時間、私はある種のテクニックを研究してきましたが、最初はそれがこうも発展するとは思ってもみませんでした。
とりあえず目前の論文のためにと始めたことが、時が経つにつれて、このテクニックは有用なものではないか、と思えてきたのです。
AlJ−−−つまり、“Ahaの瞬間”というのはあった、それはあなたが何か複雑なものをとらえることができたときだったというわけですね。 マンデルブロ−−−ええ。私の“Ahaの瞬間”というのは、それまで長い間やってきたことが、もはや、これはこっち、あれはあっちといったバラバラのものではなくて、一緒のことなんだ、と悟ったときです。
例えて言えば、初めにいくつかの村があって、それが大きくなるうちにくっついて、一つの都市になるようなものです。私の研究の対象は、もはや村ではなく、いまや一つの都市になっています。
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